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ヨーグルトを作るブルガリア菌の一種 「1073R-1乳酸菌」(以下R-1乳酸菌)を含むヨーグルト飲料の継続摂取で、小中学生のインフルエンザ感染率が大幅に減った——。
有田共立病院(佐賀県有田町 )の井上文夫病院長が8月9日、都内で開催されたセミナーでこのような結果を発表した。
この研究は、2010年10月1日から2011 年3月18日までの全登校日に、佐賀県有田町の小中学生全員(合計1904人)がR-1 乳酸菌入りヨーグルト飲料(112ml)を1 日1本飲み続けて、インフルエンザ(A、 B、新型)の感染を調べたもの。
すると有田町の感染率は小学生で0.64%、中学生で0.31%と、有田町周辺の他地域や有田町を除く佐賀県全体(小学生1.90〜10.48 %、中学生1.31〜7.06%)に比べ、有意に低かった。
「顕著な差が出た。R-1乳酸菌入りヨーグルトには、インフルエンザウイルス感染に対する予防効果がある可能性が示唆された」と井上院長。
R-1乳酸菌が、免疫に関係するナチュラルキラー細胞(NK細 胞)の活性を上げてインフルエンザの感染率を下げたと考えている。
中学生よりも小学生で地域間差が大きく出たことについて井上院長は「年少者の方が免疫機能の発達が遅れているためではないか」と話した。
なお今回の調査ではインフルエンザワクチンの接種率は考慮していないが、どの地域でも差異はないと想定している。
同様の試みは、同じ期間に山形県舟形 町でも行われた。
山形県では小中学生の休みの原因がインフルエンザによるものかどうかを集計するシステムが整備されていないため、厳密な分析はできなかっ た。
しかし、舟形町の小中学生のインフ ルエンザ感染率も、周辺市町村に比べて低い傾向は見られたという。
免疫の基礎研究に詳しい順天堂大学医学部免疫学講座の奥村康特任教授は「感染症について数千人規模で6カ月間にわ たる調査は今までにない。今回の調査結果によって、ヒトでのヨーグルト、乳酸 菌の摂取とインフルエンザ感染抑制の関係が初めて分かった言える」とコメントした。
高齢者対象の試験では、風邪のリスクが6 割減
佐賀県有田町と山形県舟形町では2005 年から2007年にかけて、高齢者を対象としたR-1乳酸菌入りヨーグルトの長期摂取効果についての調査研究が行われている。
「加齢とともに免疫力が低下し、感染症になるリスクが高まるが、これをヨーグルト摂取で抑えられるかどうかを調べるために行われた試験」(井上院長)という。
有田町では85人(年齢中央値67.7歳) 、舟形町では57人(同74.5歳)が参加、R -1乳酸菌入りヨーグルトを食べる人と、 一般的に免疫を高める作用があるとされる牛乳を飲む人に分け、それぞれ12週間 、8週間継続して摂取した場合の風邪症状の有無を比較した。
当時はまだインフルエンザ感染の迅速診断キットが普及していなかったため、 いわゆる風邪とインフルエンザを区別することなく、目、鼻、のどの諸症状や発熱、頭痛の有無などを調べた。
その結果 、牛乳摂取群に比べてR-1乳酸菌入りヨーグルト摂取群では、症状の発現リスクが6 1%低かった。
インフルエンザや風邪などのウイルスに感染した細胞を初期段階で見つけて攻撃するのがNK細胞の役割だが、この試験ではNK細胞の活性(NK活性)についても調べている。
もともと活性が高めの人では有意な変化が見られなかったが、活性が低めの人では、R-1乳酸菌入りヨーグル ト摂取によって有意に活性を高められることが分かった。
これらの結果は、学術誌に掲載されている(Br J Nutr. 2010 Oct ;104(7):998-1006.)。
R-1乳酸菌の生み出す「酸性EPS」がカギ
R-1乳酸菌は、明治が保有する菌。
同社は乳酸菌やビフィズス菌が作るネバネバ 成分、多糖類(EPS:Exopolysaccharide )に免疫機能を高める作用があることに 着目、数多くの菌の中から、EPSを大量に作る菌を見つけ出した。
さらに同社は、EPSにも酸性と中性のものがあり、免疫機能を高めているのは酸性EPSらしいということを突き止めた。
酸性EPSが免疫を担う種々の細胞(樹状細胞、マクロファージ、ヘルパーT細胞など)を刺激し、「感染した細胞を攻撃しろ」という情報を伝える物質のINF-γ(イ ンターフェロンガンマ)を増やすことでNK細胞の活性が上がると考えられている。
同社は北里大学北里生命科学研究所の 山田陽城教授らと共同で動物試験も行っている。マウスに酸性EPSやR-1乳酸菌入りヨーグルトを与えると、インフルエンザウイルス感染後の生存率が上昇して生存日数が長くなることを確認した。
奥村特任教授は「今回の小中学生を対象に行った調査結果は、NK活性についての理論やこれまでに行われた動物実験の結果や基礎的な論文の内容を裏付ける結果だ」と評価した。
NK細胞が体内をパトロール、感染した細胞をやっつける
「ヒトの体内では毎日1兆個の新たな 細胞が生まれるが、そのうち約5000個は“ 不良”な細胞。これががんのもとにもなる 。不良な細胞やウイルスに感染した細胞 を処理してくれるのがNK細胞」(奥村特 任教授)。
つまり、体内をパトロールしてがん細胞やウイルス感染細胞が勢いをつける前に攻撃するのがNK細胞の役割というわけだ。
常にNK活性を高くキープしておきたいものだが——。
乳酸菌以外の食品成分では、「キノコに含まれる多糖類のβ(ベ ータ)グルカンや大量のビタミンCなどに もNK活性を高める作用があるが、摂取量や摂取方法の手軽さから考えると、乳酸 菌飲料は効率がいい」と奥村特任教授は言う。
NK活性は1日の中でも変動していて、 日中は高く夜間は低い。
不規則な生活を余儀なくされるシフト勤務者のNK活性は低くなりがちなことも分かっている。
また、精神的なストレスでも変動しやすい。
悲しみは活性を下げ、笑いは活性を上げるという報告もある。
「R-1乳酸菌は、 小学生やお年寄りだけでなく、社会の第一線で働いている人の健康維持に役立つのでは」と奥村特任教授は期待している 。
(文/小山千穂=チャンゴ・ジャパン)
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